乳酸菌は死んでもスゴイ!?乳酸菌生産物質の効果
「乳酸菌やビフィズス菌は生きた状態で腸まで届かないと意味がない」
そうお考えの方はこの記事を読んで、今すぐ悔い改めてください!(笑)
実は、乳酸菌って死んでもスゴイんです!そのワケは「乳酸菌生産物質」というちょっと耳慣れないモノに秘密が隠されていました。
乳酸菌生産物質って何?
乳酸菌生産物質は乳酸菌がその特性により生み出す乳酸や酢酸、アミノ酸やビタミン・ミネラル、死滅後に残った菌体成分(細胞壁成分)などが混ざったものだと思ってください。
この乳酸菌生産物質には生きた乳酸菌に負けないくらい、スゴイ健康効果が秘められているんです。
乳酸菌生産物質に期待できる効果
乳酸菌生産物質には多くの科学的根拠から、次のような作用があると考えられています。
- 腸内環境を改善させる
乳酸菌生産物質を摂取すると腸内の善玉菌が増加し、悪玉菌が大きく減少することが分かっています。つまり腸内環境の改善効果があるわけです。 - 小腸の絨毛を保護する
絨毛は小腸にある体内への栄養吸収を担う重要な器官ですが、非常に傷つきやすい性質があります。乳酸菌生産物質を摂取するとこの絨毛を保護する効果が認められています。 - 肝機能障害を抑制する
体内に侵入したウイルスや毒素は小腸の免疫機能によって解毒、排出されますが、小腸の機能不全やウイルスの量によっては体内に侵入してしまいます。この時有害物質の解毒を行う重要な役割を果たしているのが肝臓です。
つまり肝臓は私たちの体を守る最後の防衛線の役割を果たしてくれますが、乳酸菌生産物質はその肝臓の機能障害を抑制する効果があることが分かってきました。 - 免疫力を強化し活性化させる
乳酸菌生産物質は小腸の免疫機能をコントロールしているパイエル板を活性化し、免疫力を強化する働きがあります。腸には全身の70%もの免疫細胞が存在し、これが活性化されれば全身の免疫強化につながります。 - アレルギーを抑制する
乳酸菌生産物質の摂取はアレルギー症状を引き起こすヒスタミンの分泌を抑制することが確認されています。 - 病気や老化の原因となるAGEの生成を抑制する
近年の研究によって、体の老化や病気の原因となるAGEという物質の生成を、乳酸菌生産物質が抑制することが分かってきているそうです。
バイオジェニックスという考え
乳酸菌生産物質を考える上で重要なのが、バイオジェニックスという概念です。ここは少し小難しい内容になりますから、乳酸菌生産物質にとても興味がある人だけ読んでください。
あまり興味が無い人は飛ばして、他のページを読んだ方が賢明だと思います。(笑)
プロバイオティクスとプレバイオティクス
生きたまま腸内に届いて人体に良い影響を与える微生物や、それらを含む食品を摂取することを「プロバイオティクス」と呼びます。
また腸内の善玉菌を活性化させ増殖を促す成分、つまり善玉菌のエサとなるオリゴ糖や食物繊維を体内に摂り入れる行為は「プレバイオティクス」と呼ばれます。
従来の腸内細菌研究においてはこのプロバイオティクスとプレバイオティクスこそ、私たちの体に良い影響をもたらす方法だと考えられてきました。つまり生きた乳酸菌を腸まで届け、そこにエサを与えて増殖させれば健康になれると考えられていたんです。
プロバイオティクスだけでは説明できない矛盾
しかし研究が進むと矛盾があることも分かってきました。
ヨーグルトなど食品中に存在する善玉菌は、胃や小腸で消化液に殺菌され大腸に届く前に90%以上が死滅します。またわずかな菌は生きて大腸まで届いたとしても、元々腸内に存在する細菌群から異物とみなされ、すぐ体外に排出されてしまうのです。
つまりいくら乳酸菌を摂ってもそれ自体が腸内で増えることはまず無いという事です。しかし実際に乳酸菌の摂取によって健康作用が確認されていたため、そこに大きな謎が残りました。
新しい概念「バイオジェニックス」の誕生
プロバイオティクスの効果は生きた乳酸菌が腸内に届き腸内環境が改善した結果ではなく、乳酸菌が作り出した物質や菌体成分(乳酸菌生産物質)が腸管免疫を直接活性化するせいなのでは?
そのように考えたのが日本の腸内細菌研究の第一人者である光岡知足博士です。その後光岡博士は、乳酸菌は死菌でも生菌と同様の健康作用があることを研究によって明らかにされ、新しい概念を提唱されました。これがバイオジェニックスです。
バイオジェニックスによって、乳酸菌などの善玉菌を生きたまま腸に届けることだけが重要なのではなく、死菌や菌体成分にも様々な健康作用が期待できることを考慮に入れて腸内細菌を考える必要が出てきました。
乳酸菌生産物質や腸内細菌の研究はものすごいスピードで進んでいますので、今後も続々と新しい効果が明らかになっていくはずです。
この記事のまとめ

バイオジェニックスという考え方を知ると、「生きて腸まで届く」というフレーズにあまり意味が無いような気がしてきませんか?しかしそうとも言えないと思います。
生きて腸まで届いた善玉菌はすぐに腸内で乳酸や酢酸を作り出し、腸内を酸性に保つ助けをしてくれます。腸内が酸性に傾くと悪玉菌が増えにくくなり、元々腸内にいた善玉菌の増殖を助けることにもなります。
また酸性物質が腸壁を刺激してぜん動運動を活発化させることで、お通じが促されることも分かっています。これらの働きは死菌や菌体成分には担えませんので、生きて腸まで届くことも重要な要素だと思うからです。
つまり「生きて腸まで届く乳酸菌」と「死んで残った乳酸菌生産物質」のどちらも、私たちにとって大切な役割を果たしてくれているのです。